宇宙ロボット工学・小型衛星技術 宇宙の安全を見守る。 理工学部 電気電子情報工学科  教授 木村 真一

動画再生

1957年の旧ソ連による人工衛星スプートニクの打ち上げ成功以来、世界各国が人工衛星の打ち上げを行い、その回数は4500回を超えました。その結果、現在、地球の周りには役目を終えた人工衛星や打ち上げ時に発生した破片などが多くあり、スペースデブリ(宇宙ゴミ)として大きな国際問題となっています。国際宇宙ステーションも、スペースデブリが原因で、頻繁に回避行動を取らなければならない段階にまで来ており、状況は深刻さを増しています。

宇宙の安全を見守る。

宇宙空間では無重力環境であるだけでなく、地球の重力に従って軌道運動をしているので、スペースデブリを回収・除去することは、技術的、政治的、さらに経済的にも無数の障壁があり、非常に難題と言われています。
私は、インテリジェントな制御を実現する情報処理技術、宇宙ロボット技術、電子回路など搭載機器を開発する技術など、さまざまな技術に総合して取り組むことで、経済的にも実現可能な、宇宙のゴミ問題を解決するスペースデブリ回収・除去システムの開発を目指しています。

スペースデブリを回収するためには、絶対的に必要なものが3つあります。ゴミを見つけるための『目』、ゴミに接近するための『脳』、そしてゴミを回収するための『手』です。私たちは、これらの技術に総合的に取り組んでいますが、スペースデブリを回収するためになくてはならない『目』と『脳』を実現する宇宙用カメラを、多数開発し、宇宙空間での実験にも成功しています。特筆すべき点として、理論的な研究だけではなく、実際に搭載できる機器を直接開発している点が上げられます。
宇宙用の機器は高い信頼度が要求されるため、新しい部品が敬遠される傾向にあり、一般的に非常にコストが高く性能が低いといわれています。私たちは、自動車のバックモニターや携帯電話などに使用されている最新の部品を宇宙空間で活用する技術を確立しました。また、故障に適応し、高度な自律処理を実現するソフトウエア技術と組み合わせることで、非常に低コストで高度な画像処理能力を持ったカメラを開発しました。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)のソーラー電力セイル実証機『イカロス』では、こうした技術を活用し、世界最小の宇宙用カメラを開発し、『イカロス』の全体像を撮影することにも成功しました。
こうした実績から、今では、宇宙ステーション補給機「こうのとり」に搭載する実験用カメラシステムなど、さまざまなプロジェクトを行っています。

宇宙システムの高知能化のために。

軌道上で高度な知能、すなわち優れた『脳』を持つことは、カメラに限らず、人工衛星にとって非常に重要な技術です。私たちは、宇宙用カメラ開発で蓄積したハードウエア・ソフトウエア技術を広く宇宙システムの高知能化のために活用する研究を進めています。東京大学等と共同で開発している人工衛星の頭脳に当たる搭載計算機システムについても開発を進め的ました。また、こうして開発したソフトウエア技術を大学などと広く共有し、宇宙システムのオープンソース化を進めるために、搭載計算機とソフトウエア的な互換性を持ち、搭載計算機の優に100分の1の価格の超小型計算機を開発し、企業と協力して、一般に販売を開始しました。この計算機は衛星だけでなく地上ロボットなどの用途にも応用可能な技術としてメディアで話題を呼びました。

さらに、スペースデブリ回収・除去システムの「手」についてもさまざまな面から開発を進めています。無重力下での衛星を捕まえる技術や、宇宙船内での作業を補助する上で最も重要となる、接触安全を実現するために、不慮の接触に対して、自らが分解することで安全を確保するモジュール型ロボット、宇宙ロボットや衛星を適切に操作するための遠隔操作技術などです。

世界・宇宙とつながる研究でどこでも通用するスキルを身に付ける。

地球はますます狭くなり、宇宙は人類にとって次なるフロンティアとなりつつあります。
私はこれまでJAXAのさまざまなプロジェクトに協力し、現在は“はやぶさ2ミッション”に搭載するカメラの開発に取り組んでいます。はやぶさ2は小惑星を探査して地球に帰還することを目標として、2014年度に打ち上げを予定しています。

私の研究室で行っている研究の舞台は宇宙です。世界、宇宙を身近に感じながら研究を行うことができます。要求分析、システムデザイン、資源配分の実施から、部品製作、組立て、テストの実施に至るまで、宇宙システムデザインに関してあらゆることを学んでいきます。衛星だろうと、コンピュータだろうと、スマートフォンだろうと、そのスキルはさまざまな分野に応用できます。
実際の宇宙開発の第一線に参加し、自分たちが手がけた装置が実際に宇宙で活用されるのは、得がたい経験ですが、何より一つの物を作り上げるというのは、とにかくとても楽しいです。

理工学部 電気電子情報工学科 教授木村 真一Shinichi Kimura

1993年東京大学大学院 薬学系研究科製薬化学専攻 博士課程修了、郵政省通信総合研究所(現 独立行政法人情報通信研究機構)の主任研究員を経て、2007年東京理科大学理工学部電気電子情報工学科着任。宇宙ロボティクス、自律制御技術、宇宙システム、小型衛星技術の研究に取り組んでいる。

関連リンク